親子で計画的に生前贈与を活用し、相続税を節税する具体的な方法

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生前贈与を上手に活用しましょう!クジラからウサギたちへ!?

目次

親子で計画的に生前贈与を活用し、相続税を節税する具体的な方法

世の中、相続対策と言われるものは数多くありますが、不動産会社の言うなりにアパート、マンションを建ててしまった結果、空室だらけで、結果的に大損害…といった失敗談を多く耳にします。

筆者自身も義父の相続を経て事前の相続対策の重要性を実感していますが、この記事では、さらに、1級ファイナンシャルプランナー、相続診断士として、たくさんの方に相続、贈与のアドバイスをしてきた経験を合わせて、お子さまやお孫さまに、計画的に資産を贈与し、喜ばれつつも、相続税・贈与税の合計額を減らしていく実践的な方法をお伝えします。

日本の相続税は世界の中でも突出して高いので、何も対策をしないと、三代で大部分の資産は消滅してしまいます。

ファミリー全員が笑顔になれるよう、資産を増やすことに取り組みつつ、守る対策もしていきましょう。

この記事を最後までお読みいただければ、相続対策の基本と言われている生前贈与を活用した実践的な節税知識を身につけることが出来ると思います。

生前贈与対策とは何か?基本を理解する。

年間110万円までは贈与税がかからず非課税で子供や孫にお金を渡せるらしい…

この話は、ほとんどの方がご存知のことと思います。

ただし、実際に実行に移そうと考えると、様々な課題が浮かんでしまい、多くの人が何もせず、最後は面倒になってしまって、そのまま相続を迎えてしまい、必要以上の相続税を払うことになるという事例をたくさん見てきました。

何が障壁となるのでしょうか?

  • そもそも今のまま万一のことが起こったとして、相続税がどの程度になるのかわからない。
  • 従って、どの程度の資産を子供や孫に贈与したら良いのかわからない。
  • そもそも自分自身、これから最期まで、どの程度のお金がかかるのかさえわからない。贈与しても大丈夫なのか?
  • 子供ならまだしも、孫にまとまったお金を渡してしまうと、かえって人生を狂わしてしまうのではないかと心配になる。

私が体験してきたたくさんの事例をまとめると、上記のように要約することができると思います。

みなさん、結局、贈与して、子供や孫には喜こばれたいけれど、実はよくわからないから心配で実行に移せない…ということなんですね。

贈与対策の基本的な流れ

上記のポイントを踏まえて考えます。

まずは、ご自身、ご夫婦の老後の必要資金をざっと計算します。70歳のご夫婦であれば、

(100歳−70歳)✖️(夫婦の年間の生活費ー夫婦の年金額)といった計算式になります。

少し例を挙げながら、具体的に計算してみると…

  • 夫婦の年間の生活費を35万円✖️12ヶ月=420万円
  • 夫婦の年金額を20万円✖️12ヶ月=240万円とすると、
  • 差し引き年間不足額は、420万円ー240万円で180万円となります。
  • 100歳まで30年分を確保すると不足額は180万円✖️30年で5400万円となります。

大雑把ですが、今の時点で財産を5400万円程度お持ちなら、その他の、現金、土地などは贈与してしまっても、大きな問題にはならないと言うわけです。

実際には、

  • 最後は老人ホームに入居するかもしれない、
  • 大病した時のために医療費を確保しておかなければならない

など、個別の事情がおありになることと思います。

バランスの問題なのですが、結局多くの方は、心配し過ぎて自分の財産をほとんど持ったまま亡くなってしまい、お子さまが、多額の相続税を支払うことになるのです。それ故、相続税は、最後の借金とも言われます。

国もどこからたくさん取れるかよく分かっていますから、相続税は増税傾向にあります。

まずは、

  • この位あれば残りの人生は大丈夫!という計算をして、
  • 子供や孫に使いきれない財産は出来るだけ贈与し、
  • 子供や孫に喜んでもらって良い人間関係、親子関係を維持し、
  • 最期は、子供や孫にお世話になろう!

と考える方が良いのではないでしょうか。

贈与税率と相続税率

贈与税は、相続税を補完する税と言われています。

つまり、相続税率より、贈与税率が低ければ、皆さん相続が発生する直前などにたくさんのお金を贈与して、相続税を減らそうとしてしまいますから、それが出来ないように、贈与税率は相続税率よりも高く設定してあります。

従って、贈与対策で相続税を減らそうと思えば、少しずつ、長年にわたって贈与し続けるしか方法はありません。時間だけが味方なのです。ですから、贈与を始めるのはなるべく早い方が良いです。

現在50代の方であっても、親が亡くなり自分が相続した立場であれば、将来、自分にも同じことが起こりますから、自分の子供に対する贈与対策も直ぐにでも始めた方が良いということです。

少し、ややこしくなりますが大事な部分ですので、もう少し解説すると、贈与対策は相続対策です。

つまり、贈与をすることによって、相続税を減らしていくことが目的ですから、多少の贈与税がかかっても、将来の相続税と合わせて、トータルで税金を減らせれば、対策は上手くいったということになります。

具体的な例で見てみましょう。

以下に、国税庁のホームページから相続税と贈与税の税率表を引用しました。

よく見て頂きたいのは、

  • ご自身が引き継ぐ(相続する)財産にかかると予想される相続税の税率と、
  • 子や孫に贈与した場合にかかると予想される贈与税の税率が、
  • どこで逆転するかです。

相続税の速算表【平成27年1月1日以後の場合】

 
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%,200万円
6億円超55%7,200万円

国税庁ホームページより引用:詳しくは、No.4155 相続税の税率をご覧ください。

贈与税率表(特例贈与財産用)

  • 例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。
  • 夫の父から、妻の父からの贈与等には使用できません。
基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

国税庁ホームページより引用:詳しくは、No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)をご覧ください。

上の二つの表を見て頂くと、

  • 相続財産を1000万円以上残しただけで、相続税率は15%になります。
  • 一方、贈与税率は、年間200万円までの贈与であれば、10%です。
  • 実際には年間110万円までの贈与非課税枠がありますから、
  • 310万円を贈与しても、税率は10%です。

居住地が都会であれば、土地などを含めると、相続財産が1億を超える方もいらっしゃるでしょう。

相続人が何人いるのかにもよりますが、相続税率が30%を超えるような方は、より早めに、しかも、110万円の贈与非課税枠を超えて、例えば毎年、310万円の贈与を実行していった方が良い(トータルの税金が少なくなる)ということもあるのです。

もちろん、ご自身の生活費は、残しておいた方が良いと思いますが、本当は、それすらも子や孫に一旦贈与し、相続税を回避してから、贈与したお金で、お子様に面倒を見てもらった方が、節税という側面、ファミリー全体の利益という側面からは有利なのです。

現実には、家族との関係なども絡んで、なかなか難しいこともあると思いますが…

暦年課税について

贈与税の暦年課税とは、暦年(1月1日から12月31まで)に贈与を受けた方が、その贈与を受けた合計額に贈与税が課税されることを言います。

これには110万円の基礎控除額がありますので、110万円を超えて贈与を受けた合計額に課税されるということです。

上記を踏まえて、暦年課税で、贈与を実行していき、相続財産を減らしていくことが暦年課税を活用した生前贈与対策と言われます。

適正な額は既述の通り、財産額や受贈者の数によって異なりますので、相続税率と比較しながら決めていくことが大切です。また贈与額を変えていくことも当然可能ですので、柔軟に対応していった方が良いでしょう。

贈与の証拠を残す

例えば、子や孫に預金口座を作らせて、毎年、その預金口座にお金を振り込み贈与したということにしている方がいらっしゃいますが、子や孫ではなく、ご自身でその口座を管理(通帳や印鑑も保持)していれば、間違いなく「贈与がなかったものとして相続発生後に相続税が課税される」こととなり、相続対策の意味がなくなります。

このように実質的には贈与しておらず、名義だけを子や孫にしている口座を「名義預金」と言い、税務当局も最も目を光らせ贈与の事実を否認してくるところとなっています。必要であれば、銀行口座も銀行に命令し、確認することが出来ます。

従って、毎年、親族が集まるときにでも、贈与式などと銘打った会食でも設けて、

  • 贈与契約書を日付、自署した上で作成し、残しておく(贈与者、受贈者ともに)
  • 贈与の事実をちゃんと伝える(孫にも、おじいちゃん、おばあちゃんから貰ったお金を貯金していると理解させる)
  • その口座は、実際に、子や孫などの受贈者が管理していること
  • 110万円を超える贈与であれば、毎年、贈与税の申告をすること
  • これから10年間、毎年110万円を贈与していく、などと約束し、毎年同時期に一定額を贈与し続けると、連年贈与として、最初から1100万円を贈与するつもりだったと見做されて、1100万円に贈与税が課せられるリスクが生じてしまうので、必ず毎年、贈与すること。
  • 従って、あくまで、その年ごとに贈与することとし、贈与する日などは毎年異なる日にした方が良いでしょう。
  • 孫が幼いなどで、現金を贈与することが躊躇される場合には、そのお金を解約しにくい年金保険の保険料や、積立型の運用商品に充てることをアドバイスすれば良いでしょう。もちろん、子や孫の銀行口座から支払う、積み立てることが前提です。

贈与契約書ひな形

以下の贈与契約書ひな形をダウンロードし、活用ください。

マイクロソフトのワードで作ってありますので、氏名や住所などをあらかじめ入力しておくことも可能です。氏名の自署だけは直筆でしなければなりません。

二部作成し、贈与者と受贈者がそれぞれ保管しましょう。

まとめ

例えばタワーマンション節税など、かつて有効とされていた様々な相続対策に、徐々にメスが入り、地道な対策を積み重ねることの有効性が再確認されて来ています。この記事では、古典的ではありますが、効果が絶大な、生前贈与対策についてお伝えしました。

財産を運用や事業などで増やすことも大切ですが、増えた財産を守っていくことも大切です。皆さま、ご家族の発展にお役に立てればうれしいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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