不動産を生前贈与することで相続税を節税する方法

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不動産を贈与すると相続税は減らせるか?

目次

不動産を生前贈与することで相続税を節税する方法

現金の贈与は比較的簡単ですよね。

関連記事:生前贈与で贈与税が非課税となる4つの方法と注意点

関連記事:親子で計画的に生前贈与を活用し、相続税を節税する具体的な方法

も合わせてご覧いただければと思います。

ところが、

  • 何歳まで生きるかわからないし、
  • 病気になったら予想外に医療費がかかるかもしれない
  • 施設に入所するかもしれないし…

などと考えれば考えるほど、現金は手元に残しておきたいものです。そのように考える日本人の資産家は多いので、結果として多額の相続税を支払うことになってしまいます。

そこで、

  • 土地や家屋を子供や孫に贈与し、
  • 住み慣れた土地や家には住み続けて、
  • 手元に現金は残しながら、
  • 結果的には相続財産を計画的に減らしていく

方法を見ていきたいと思います。

土地を贈与した方が良い方(対象となる方)

関連記事でも解説しましたが、贈与税は相続税を補完する税なので、基本的には税率が高く設定してありますから、財産を承継する場合には、相続の方が有利になるケースが大部分です。

配偶者の優遇税制や小規模宅地の特例等、様々な節税特例がある上に、相続税の基礎控除として、3000万円+法定相続人×600万円までは、非課税となる制度があるからです。

従って、奥様と、お子さまお二人がおられる方が亡くなった場合には、4800万円まで非課税となりますので、課税相続財産の評価額が、各種特例を使った上で、4800万円の非課税枠に収まる場合には、土地の贈与をする意味はほとんどありません。

唯一あるとしたら、生前に、土地の所有を特定の子供などに確定する場合でしょうが、これも遺言などで意思表示をすれば足りるので、土地の贈与までする必要はないでしょう。

では、どのような場合には、土地の生前贈与はメリットを感じることが出来るのでしょうか?

それは、

  • 保有する現金が比較的少なく、
  • 土地の価値が高い場合です。
  • このような場合には、現金で贈与し過ぎると、いざという時に医療費や施設への入所代金、生活費が足りなくなる恐れがあります。
  • 土地や家屋を贈与していけば、課税相続財産評価を落とすことが出来ますし、手元の現金を減らさずにすみます。

このような状況にある資産家の方は、土地や家屋の贈与を検討しても良いでしょう。

土地や家屋を贈与する場合の最大のデメリット

 

最大のデメリットは、

  • 贈与税がかかること
  • 相続であればかからない不動産取得税3%
  • 贈与された不動産を登記する際に必要な相続の5倍の「登録免許税」2%

があげられます。手続きを士業に依頼する場合の手数料は考慮していません。

不動産取得税はいくら必要か?

不動産取得税の課税標準は固定資産税評価額です。

固定資産税評価額に原則として4%の税率を乗じて税額を算出します。

ただし令和3年3月31日までは、住宅及び土地の取得についての税率が3%となります。

つまり、1000万円分の土地を贈与すれば、30万円必要ということです。

詳しくは、東京都主税局不動産取得税のページをご覧ください。

登録免許税はいくら必要か?

登録免許税は、所有権移転登記等を行う際にかかる税金です。
贈与によって所有権移転登記を行う際にも、課税されます。
税率は、登記内容によっても異なりますが、相続による所有権移転登記は、0.4%となっています。
そして売買や贈与による所有権移転登記の場合、2%となります。つまり相続の5倍です。
つまり1000万円分の土地を贈与すれば、20万円必要ということです。

相続と贈与のシミュレーション例

例えば、2億円の固定資産評価額の土地を、二人の子供に贈与していくパターンを想定します。

あくまでシミュレーションですから、土地以外の財産は、ちょうど、基礎控除の範囲程度という前提とします。(このような方は、大都市には比較的多いですね)

毎年、固定資産税評価額1000万円分の土地を、二人の子供に贈与税を支払いながら贈与します。

つまり10年で、土地の所有権は二人の子供に贈与で移転する想定です。

まずは、贈与税と不動産取得税、登録免許税を計算します。

  • 贈与税:1000万円×30%-90万円=210万円
  • 不動産取得税3%=30万円
  • 登録免許税2%=20万円

合計で260万円となります。

これを二人の子供に10年間繰り返します。

贈与税、不動産取得税、登録免許税は260万円×二人分×10年分で5200万円となります。

高いですね。

では、贈与せずにそのまま土地を保有した場合にはどうなるでしょうか?

一人当たり1億円の評価の土地を相続することになるので、

1億円×相続税率30%-速算控除700万円=2300万円となります。

二人で4600万円です。

相続税の方が安くなりましたね。どうもこの辺りが損益分岐点になりそうです。

ご存じのように、1年あたりに贈与する額を減らせば、贈与税率が下がります。

従って、贈与できる期間が長く取れる方(例えば20年)は、より、贈与税を減らすことが出来るでしょう。

また、相続財産が、一人の相続人当たり、2億、3億、6億となってしまうことが予想される資産家の方は、それぞれ相続税率が40%、45%、50%となり、6億超となれば、相続税率は最高税率の55%となってしまいます。

このような方は、それよりも低い贈与税率の範囲で土地や家屋の贈与を計画的に実行することも対策のひとつということになるわけです。

その際、合計5%となる不動産取得税と登録免許税を合わせたシミュレーションを確認しなければなりません。

まとめ:結局どっちがお得?

以上、ご覧いただいたように、現金を贈与するより、現金を手元に残して不動産を贈与する方が安心という場合があると思います。

ただし、そもそも高い税率の贈与税に加えて、不動産取得税と登録免許税で合計5%が上乗せされてしまうというデメリットがあります。

当然、通常は、相続税よりも高額な贈与税がかかるわけですから、相続税と贈与税の税率を比較し、どちらが相続税を減らせるのかをシミュレーションする必要があるということになります。

結論としては、少なくとも数億以上の固定資産税評価額の土地をお持ちの方で、現金は贈与しにくいが、土地の贈与は出来るという場合に、長期間かけて贈与すれば、相続より税金を減らせる可能性のある資産家の方がおられるということになります。

もしかしたら?という方は、相続に詳しい税理士に相談し、シミュレーションをされることをお勧めします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

資産を守る一助となれば幸いです。

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